Ukikusa’s blog

FIREして退職。のんびりライフの日常

老人施設や病院にジャズってどうなの?

状況にふさわしい音楽とは

 

 青森に住んでいたころ。年老いた母がいて、以前はショートステイでお世話になっていた施設がある。広くて清潔で、スタッフの皆さんはものすごく親切で思いやりのある方たちだった。その後、遠距離の引っ越しで別の町の施設に入り、コロナのあと在宅に切り替えていっしょにすごすことになったのだが、今日はその話ではない。

 そこでは小さかったがはっきり聞こえる音量でジャズがかかっていた。スタッフの方は二十代から五十代、男女混じって働いていらしたが、特に音楽の好みにうるさそうではない、ごく平凡な働き者、という印象の方たちだ。入居者やデイケアの利用者たちはもちろん七十代以上に見えた。そんな施設でなぜジャズなんだろうか。老人たちがブルーノートの音色を聞いて心安らいだりするものだろうか。

 今東海に住んで、喘息持ちの自分も定期的にとあるクリニックに行く。大きな窓と2階の天井まで吹き抜けがあるモダンな建物、美しい焼き物のコレクションが目に優しく、待合室のコーヒーは毎回自動で豆からひいてくれる本格的な香りを漂わせている。でも、だ。でもここでもジャズがずっとかかっている。喘息や熱が出ていたり、慢性の糖尿や腎臓、心臓病に悩む患者たちの中で、待っている時間、コルトレーンで和まされる人がどれほどいるのだろう。

 私は音楽のように、そこにいる限り避けることができないものに、このような無神経さが本当に嫌いだ。どうしてふつうのクラシックとか、イージーリスニングとか、より多くの人が好むであろう音楽、というより、嫌いな人が少ない音楽をBGMに選べないのか?それほどジャズが日本に浸透しているなら、身近なカフェなどで耳にする機会が少ないように感じるのはなぜか?老人のための施設なら、どうして童謡・唱歌昭和歌謡などを小さな音で流してあげられないのか?

 私自身ロックやブルース、カントリーやポップスで育った世代であり、ジャズ喫茶に入り浸ったこともある。ジャズが悪いといっているのでは決してない。都会のビジネスホテルの受付なら、ジャズがふさわしいところもたくさんあろう。私が思うのは、利用している老人たち、病人たちなど主役の人たちに対して配慮することなく、美しい建物や調度、そしたらやっぱジャズだな、と勝手に見た目(音楽は見た目じゃないが)で無神経に考える人たちの神経がどうなっているのか、ということなのだ。

 もういちど居住したり、利用している人たちの表情をみてほしい。その世代と背景を考え、その方たちがジャズを聴いてどう感じているかを想像したり、せめてアンケートをとったりしてほしい。すくなくとも私は上にあげた施設では、イライラしたり不快感を感じた(し、今も感じている)。